部会長挨拶(2021年度~2022年度)
有機結晶部会は、有機分子の集合体である「有機結晶」を中核的なキーワードに据え、その構造・機能・物質変換など様々な角度から研究する研究者の集まりです。日本化学会の5番目の部会として1997年に発足し、既に20年以上の歴史があります。有機結晶の研究領域は、基礎科学の重要な分野の一つとして発展してきました。最近では、生命の理解、創薬に向けた取組み、機能材料などの開発研究にまでその範囲を広げています。
有機結晶部会は、有機結晶ディビジョンと連携して活動しています。春の日本化学会年会では関連する部門を分担し、秋には有機結晶シンポジウムを主催しています。また、有機結晶シンポジウム前日には最新の結晶構造解析のノウハウ、計算科学の活用法、ベテラン研究者の経験談など貴重な話題を聞くことができるプレシンポジウムを無料開催し、学生や研究者の皆様が直に交流する場を提供しています。さらに、部会員向けの情報誌として電子版のニュースレターを年3回発行しています。
結晶と聞くと固くてキラキラした物質を思い浮かべる方が多いかと思いますが、有機結晶部会では、「有機結晶」を切り口として、結晶にとどまらず液晶、非晶質、超分子に及ぶ広範な凝集体について、種々の情報を共有し、化学の発展に寄与することを目指しています。「有機結晶」がカバーする領域は、結晶構造を知る、結晶を構成する分子の構造を知ることに始まり、そこにはたらく分子間相互作用、規則的配列を利用した化学反応、包接結晶形成に基づく分子認識と反応場の提供、分子集合化制御による機能材料の開発まで広がっています。
このように、有機結晶部会では様々な形態を有する有機物の凝集体を対象に、構造・合成・物性・機能・計測・理論など学際領域の特長を活かして部会の活動を行っています。広い意味での「有機結晶」に関心をお持ちの学生、研究者の皆様には、有機結晶部会に是非入会され、研究交流の場として積極的に活用されることをお薦め致します。
吉岡 直樹 (慶大理工)